HSP3 での開発、普段は標準のエディタ(hsed3)を使っている方が多いと思います。 シンプルで使いやすい反面、コードが長くなってくると「もっと便利に書きたい!」「過去の状態に戻したい!」と思うことはありませんか? この記事では、世界で最も使われているエディタ Visual Studio Code (VS Code) で HSP3 を開発する方法を紹介します。

1. なぜ VS Code なのか?

公式エディタがあるのに、なぜわざわざ VS Code を使うのでしょうか? 主な理由は以下の5つです。

1.1 強力な入力補完 (IntelliSense)

VS Code 最大の魅力は、コードを書きながらリアルタイムで補完候補が出る IntelliSense です。

  • hsed3: コマンドを覚えていないと書けない。ヘルプを手動で開く必要がある。
  • VS Code: mes と打てば候補が出現。パラメータの意味もその場で表示されます。

コマンドを丸暗記していなくても、サクサクとコードを書くことができます。

1.2 Git によるバージョン管理

「昨日のコードに戻したい」「間違って消してしまった」 そんな時、VS Code なら標準搭載の Git 機能で解決できます。

  • 変更履歴を自動で記録
  • 過去のバージョンにいつでも戻せる
  • どこを変更したかが色付きで分かる

1.3 マルチカーソルによる効率化

変数名を一括で変えたい時、一つずつ書き換えていませんか? VS Code なら Ctrl+D で同じ単語を複数選択し、一瞬でまとめて編集できます。

1.4 豊富な拡張機能

HSP 以外にも、便利な機能を追加できます。

  • Error Lens: エラー内容をコードの行末に直接表示
  • Bracket Pair Colorizer: 対応するカッコを色分けして見やすく
  • GitLens: 誰がいつその行を書いたかを表示

1.5 他言語への応用

VS Code は Python, JavaScript, C++ など、あらゆる言語で使われています。 HSP で VS Code の使い方を覚えておけば、他の言語を学ぶ際にもそのままスキルが活かせます。

2. 公式エディタ hsed3 との比較

「じゃあ hsed3 はもう使わなくていいの?」というと、そうではありません。 それぞれの得意分野があります。

機能 hsed3 (公式) VS Code + 拡張機能
起動速度 🚀 爆速 🐢 やや遅い
準備・設定 不要 (同梱) 必要 (インストール等)
入力補完 △ (F1ヘルプ) ◎ (リアルタイム補完)
定義へ移動 △ (ラベル一覧) ◎ (F12でジャンプ)
参照検索 ◎ (使用箇所を一覧表示)
Git 連携
かんたん入力 ◎ (AHT対応) △ (スニペットで代用)
文字コード Shift_JIS UTF-8 推奨

どちらを選ぶべき?

  • hsed3 がおすすめ:
    • プログラミングを始めたばかりの初心者
    • ちょっとしたテストコードを書きたい時
    • HSP の学習だけに集中したい時
  • VS Code がおすすめ:
    • 数百行以上のプログラムを書く時
    • 他言語の経験がある、または学びたい時
    • Git でバージョン管理をしたい時
    • 入力補完で楽をしたい時

3. セットアップガイド

それでは、実際に VS Code で HSP3 の開発環境を作ってみましょう。

Step 1: 必要なもののインストール

  1. HSP3 (Ver3.7以上推奨)
    • 公式サイトからダウンロードしてインストールしてください。
    • UTF-8 版のランタイムが含まれるバージョンを推奨します。
  2. Visual Studio Code
    • 公式サイト からダウンロードしてインストールしてください。

Step 2: 拡張機能「HSP3 Language Support」の導入

現在はプレビュー版のため、GitHub から拡張機能ファイル (.vsix) をダウンロードして手動でインストールします。

  1. 拡張機能ファイルのダウンロード
    • GitHub Releases ページ にアクセスします。
    • hsp3-language-support-0.1.1.vsix をクリックしてダウンロードしてください。
  2. VS Code へのインストール
    • VS Code を起動し、左側のバーにある 拡張機能アイコン (四角いブロックのアイコン) をクリックします(または Ctrl+Shift+X)。
    • 拡張機能パネルの右上にある 「…」(ビューとその他のアクション) をクリックします。
    • メニューから 「VSIX からインストール… (Install from VSIX…)」 を選択します。
    • 先ほどダウンロードした .vsix ファイルを選択してインストールします。

右下に「Completed installing HSP3 Language Support」と表示されれば導入完了です!

Step 3: 設定 (settings.json)

拡張機能が HSP3 のインストール場所を認識できるように設定します。

  1. Ctrl + , (カンマ) を押して設定を開きます。
  2. 検索ボックスに hsp3 と入力します。
  3. Hsp3: Install Path の項目に、HSP3 をインストールしたフォルダのパスを入力します。
    • 例: C:\hsp37

基本的にはこれで完了です!

4. HSP3 Language Support の機能紹介

導入が完了すると、以下の機能が使えるようになります。

シンタックスハイライト

命令、関数、文字列、コメントなどが色分けされて表示されます。 VS Code の拡張機能では、ドキュメントコメント(/** ... */)内の @param@return もハイライトされます。(HSP3言語の特性の限界もあるようです……) image

入力補完 (IntelliSense)

  • キーワード補完: reprepeat のように命令を補完。(一部)
  • パラメータヒント: カーソル位置のパラメータが何を意味するか(例:p1: 表示する文字列)を表示。 inline help

  • ヘルプ連携: HSP 付属のヘルプファイル (.hs) を解析し、標準命令の説明を表示します。 help_article

定義へ移動 (F12)

自作の #deffunc#define、ラベル *label を使っている場所で F12 を押すと、その定義元へジャンプできます。 「この関数、どこで作ったっけ?」と探す手間がなくなります。

参照検索 (Shift + F12)

逆に、「この変数はどこで使われているか?」を一覧表示できます。

コードスニペット

よく使う構文はテンプレートとして登録されています。 例えば repeat と入力して Tab キーを押すと、以下のように展開されます。

repeat 10
    ; カーソル位置
loop

コンパイル・実行 (F5)

hsed3 と同様に、F5 キーでスクリプトを実行できます。 コンパイルエラーが発生した場合は、「問題」パネルにエラー箇所が表示され、クリックするだけで該当行にジャンプできます。

5. よくある質問 (FAQ)

Q. コンパイルエラーが出ます

A. 以下を確認してください。

  1. 設定の hsp3.installPath は正しいですか? (hsp3.exe があるフォルダを指定)
  2. hspcmp.dll が HSP3 フォルダに存在しますか?

Q. 文字化けします

A. VS Code はデフォルトで UTF-8 を使用します。 一方、従来の HSP (hsed3) は Shift_JIS です。

  • 新規作成する場合は、VS Code の右下にある文字コード表示をクリックし、「エンコーディング付きで保存」→「UTF-8」を選択して保存することをお勧めします。
  • HSP3.7 以降では UTF-8 でのコンパイルがサポートされています。
  • Shift_JIS の過去資産を扱う場合は、右下の文字コードから「Reopen with Encoding (エンコーディング付きで再度開く)」→「Shift_JIS」を選択してください。

※ 参考: UTF-8版エディタ hsed3u8 の紹介

Q. 補完が出ません

A. ファイルの拡張子が .hsp になっているか確認してください。 また、HSP3 のインストールフォルダにヘルプファイル (hsphelp フォルダ) があるか確認してください。

Q. ここのFAQ全部試したけど駄目なんだけど?

A. ごめんなさい。多分バグですので、お気軽にこのページのDiscussionまたはHSP掲示板で報告ください。ここのDiscussionの場合 @Velgail でメンションすると著者が気づきやすくなります。

6. まとめ

HSP3 Language Support を導入した VS Code は、HSP3 の手軽さを残しつつ、現代的な開発体験を提供してくれます。

  • まずは hsed3 で基本を学ぶ。
  • 慣れてきたら VS Code に移行して、Git や補完機能を活用する。

このステップアップが、HSP3 プログラミングをより楽しく、快適にしてくれるはずです。 ぜひ一度試してみてください!